かつてそこに暮らしがあった [YASHICA Lynx14]
昔、私が生まれたときに親父が質屋から買ってきたカメラがYASHICA Lynx14でした。
親父はもちろん、私自身カメラには詳しくなかったので、そのカメラが輸出仕様で国内では稀なものだと知ったのはつい最近です。
当時東京に住んでいた親父は、米軍基地の近くにある質屋でそのカメラを買ったそうです。
色々調べてみると、当時米兵が輸出仕様のカメラを質屋に入れて結構な額の金を借りていたのだとか。何しろ1ドル350円の固定相場でしたからね。
私が小学校4年生の遠足で、初めて親父の監視下を離れて使った、生まれて初めてファインダーを覗きシャッターを切り、写真を撮ったカメラです。
当時はもちろん知識も技術もなく、ただフィルムを詰め替えることとピントを合わせること、そしてフィルムの箱に書いてある露出表にあわせて絞りを変えるくらいでした。
だから晴天の時は1/250 f8に合わせたきり、室内だろうが何だろうがその露出値で撮ってました。
当然絞りによる被写界深度だとか、それによって得られる表現など知るよしもなく。
しかも重さも相まって撮った写真はピンぼけ、手ぶれ、アンダーの連発でした。
残念なことに親父のLynx14は火災で燃えてしまいましたが、先日ひょんなことからこのカメラを借りることができ、撮影する暁光に恵まれました。
知識と技術をほんのちょっとばかり身につけた今、もう使うことができないそのカメラで、どうしてもきちんと撮ってみたかった私にとって、それは夢のような出来事でした。
通りがかった廃屋にて。